医療・介護職員は利用者の抱え上げや不自然な姿勢の反復により腰痛になりやすく、他業種に比べても発症率が高いことが報告されています。ここでは、医療・介護現場の職員向けに腰痛予防のポイントを理学療法士、第一種衛生管理者の資格を持つ筆者が専門的な知見を交えながらまとめます。
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腰痛リスクの専門的評価方法
まず腰痛を予防するには、現在の作業にどんなリスクが潜んでいるかを評価することが出発点です。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」でも、重量物取扱い作業などについて姿勢や重量の観点から腰痛発生リスク評価を行い、リスクが高い作業から優先的に改善策を講じるよう求めています。専門的な評価法として代表的なのが、米国NIOSH(国立労働安全衛生研究所)が提唱する「リフトエクエーション(持ち上げ作業の評価式)」(NLE)です。この手法では、最も理想的な条件下で一人が持ち上げてもよい重量の上限を23kgと定め、それより作業条件が不利な場合(荷物の位置が低すぎる・高すぎる、身体から遠い、ねじり動作を伴う、頻繁な持ち上げ作業である等)に応じて0~1の係数を掛け合わせ、安全に持ち上げられる推奨重量限度(RWL)を算出します。
日本の厚労省指針では、重量物取扱い作業の基準として「満18歳以上の男性は体重のおおむね40%以下、女性は24%以下」に常時扱う重量を抑えるよう求めています。これは平均的な男性で約20~25kg程度に相当し、海外でも類似の数値が示されています。リスク評価のポイントは「どの作業が腰に大きな負担をかけているか」を洗い出すことです。
こちらのサイトから
NLEやOWASH、REBE等の評価ツールを使用することができます。無料なのでぜひ。
腰痛を予防するための体操・ストレッチ
エビデンスに基づく運動は、腰痛の予防・軽減に効果があることが多くの研究で示されています。運動療法を行うことで姿勢バランスの改善や筋力・持久力向上が得られ、再発予防にも寄与します。
実践的な体操例:
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体幹の筋力トレーニング(プランク、ヒップリフト、スクワット)
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柔軟性を高めるストレッチ(ハムストリングスや殿部、背中、キャット&カメル運動)
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仕事の合間にできるリセット体操(後屈運動など)
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軽い体操(膝の曲げ伸ばし、体のひねり)
どの体操も継続して取り組むことが重要です。厚労省も職場でストレッチ中心の腰痛予防体操を推奨しています。
しかし痛みが出るような体操は体に合っていないのでやめたほうが良いでしょう。
私が実際にお伝えする体操は松平Dr.が考案した「これだけ体操」です。
詳しくはこちらの書籍に載っています。
内容としては医学博士・整形外科医の松平先生により、
職場における腰痛対策の最新の知見が簡潔にまとめられており、理学療法士の私から見ても参考になる情報が目白押しでした。
専門書だと5000円以上することがザラですが、2500円(税抜き)という価格も非常に良心的です。
職場環境・作業動作の改善方法
腰痛予防には、作業そのものを見直すことが重要です。以下のような環境改善が有効です。
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福祉用具の活用(リフト、スライディングシート、移乗ボードなど)
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作業動線や姿勢の工夫(高さ調整、段差の解消など)
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正しい作業手順と姿勢(荷重の分散、膝を使った動作、急なねじり回避)
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人員配置とローテーション(負担の分散と定期休憩)
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作業環境の整備(滑りにくい床、明るさ、作業台の高さ)
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健康管理の推進(健康診断、腰痛予防教育)
国内外のガイドライン・公的情報の活用
厚労省の「職場における腰痛予防対策指針」や海外のノーリフト政策、NIOSH基準などを参照し、自施設の取り組みをアップデートすることが効果的です。
結論
腰痛予防は一過性の取り組みではなく、継続的に実施する必要があります。
現場での工夫と最新のエビデンスを取り入れ、「腰痛ゼロ」の職場を目指しましょう。
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